今週の音楽「mermaid on the seesaw」はいかが?
ようこそDearVR pro
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□ ハードウェアによるバイノーラル
 立体音響の醍醐味は、なんと言っても「前後上下の表現」に尽きます。
 がしかしバイノーラルマイクは、残念ながらその醍醐味には応えてくれません。通常のステレオマイクと比べて、確かに立体的に収音できるものの正確な定位までは再現できないからです。

 昔、ラジオドラマの制作に携わっており、一時期ダミーヘッドを使用したことがありました。それはもう、立体音響ならではの様々な試みが脚本レベルで行われました。
 ところが、悲しいかな結果はパッとしないものでした。上から聞こえているような気もするけど、気のせいかもしれない。後ろから聞こえているような気もするけど、思い込みかもしれない。
 実際、音源の方向を認識する上で、経験が大いに影響するらしいです。例えば飛行機の音。「飛行機は空を飛ぶものだから上から聞こえて当たり前」という経験による認識。
 バイノーラルの音源を聞く際も、経験により判断しているケースがけっこう多いそうです。特に収録した本人、または収録に携わった第三者は、収録行為そのものを経験してますからね。あとは「自分で、自分たちで録った」という親心も、客観的な判断力を鈍らせます。ソースは僕(笑)
 そういった経験や親心を考慮すると、「バイノーラルに過度な期待は禁物」という結論に至ります。僕は、この頃に見切りをつけました。

 その後、自分の頭部をダミーヘッドとして利用する、いわゆる簡易バイノーラルマイクが登場。性懲りもなく再びバイノーラルに興味を示す。
 adphoxのBME-200は確かに良いマイクです。しかし立体的な音は録れるものの、やはり上下前後の定位の再現となると厳しいものが。そりゃあKU100でさえ微妙なのに、簡易バイノーラルマイクでは……ね(苦笑)

 余談ですが、一般的に昔と今ではバイノーラルへの認識が異なる気がします。
 現在、ASMRが国内にも浸透しつつありバイノーラルが再び脚光を浴びています。昔ならば前後上下の表現に注力するところですが、そういったコンテンツは不思議と極一部なんですよね。
 「広がりが表現されていればバイノーラル」「左右のレンジを活かしていればバイノーラル」って認識の人が非常に多い気がします。
 実際、バイノーラルと謳っているのにバイノーラルマイクを使っていなかったり、使っていても使い方を間違えていたりするコンテンツの多いこと多いこと。
 簡易バイノーラルマイクは人が装着して初めて意味が出るのであって、着けなければ単なるステレオマイクです。
 マネキンや発泡スチロールの頭部にマイクを仕込むのも無意味です。頭部内で変に反響してしまいます。
 某製品のように、耳だけリアルにしても意味がありません。頭部の再現において形は大切な要素ですが、質量も重要な要素です。また骨伝導も考慮しなければならないので、頭蓋骨も再現する必要があります。
 それと特に低音に影響を及ぼすのは体伝導なので、身体も再現すべき。音というのは空気の振動ですから、もしかしたら体毛も体伝導に一役買っているかもしれません。
 また身体は、特に下方からの音を「加工」します。それは、人が方向を判別するための重要な手がかりとなります。
 毛髪も同様。こちらは、特に後方からの音を加工します。ただ毛髪の量や有無は人それぞれなので、体伝導ほど大きな手がかりではないでしょう。

 というわけで、キリがないわけですよ(笑) KU100でさえ、イカロスの翼なわけです。まあ、逆に「太陽にさえ近づかなければ優れた翼である」とも言えますけど。
 つまりバイノーラル録音に正確な定位の再現を求めるのは酷であり、立体感の再現こそが十八番。なので「現在の認識」は、あながち間違いではないと思います。

□ ホロフォニクス
 未だに秘匿された技術。詳細は他の方にお任せしますが、初めて聞いた時はびっくりしたものです。前後の再現は微妙だけど、上下の再現ときたら驚嘆の域。
 ダミーヘッドマイクと録音機の間に「ある装置」を挟むことにより実現しているそうだけど、それが一体何なのかは未だに解明されていないという。80年代の技術なので、そう大して難しい仕組みではないと思うんですけどね。
 開発者であるヒューゴ・ズッカレリ氏に言わせると、人間の耳は常にリファレンストーンを発していて、それにより人は音源の位置を感知しているらしい。なので、その辺をシミュレートする装置ですかね。
 ともあれ、ホロフォニクスを体験してしまうと、どうしてもバイノーラルが色褪せてしまいます。

□ ソフトウェアによるバイノーラル
 ハードウェア(マイク)による上下前後の表現が無理ならば、ソフトウェアで実現するしかない。
 というわけでここ10年くらいPanorama 5、SoundLocus、Spatializer、panagement、Longcat H3D等、様々なプラグインを試したりデモ音源を聞いたりしてました。
 意外なところではBlender。エンジンは何だったか忘れましたが、このソフトにも立体音響の機能が搭載されてます。ほんと、Blenderってすごいです。
 まあ、効果はどれも今ひとつなのですが、そんな中で比較的に有力なのはLogicのBinaural Pan。上は眉辺り、下は顎辺りと高低のレンジはとても狭く前後の再現も物足りないけど、それでも他のプラグインと比べるとまずまずな完成度。
 つまりソフトウェアの分野においても、残念ながらこの辺が頭打ち。そう考えざるを得ない。と、数日前までは思ってました。

 さて! 前置きがめちゃくちゃ長くなりましたが、ここからが本題のDearVRです。
 10月17日に発売されたばかりのこのプラグインについても、最初はまったく期待してませんでした。が、デモ音源を聞いたところ、「お? これはもしや?」と惹きつけられ、試用してみてびっくり。こっ、これは、ついにホロフォニクスに追いついたんじゃないか!? いや、超えたと言っても過言ではない?? すぐさまポチった次第です。
 現在、キャンペーン中で$399→$299ですが、こんな安くていいの?? 一桁少ないんじゃない?? 決して僕は回し者ではないのですが(笑)、音響の歴史を塗り替えるであろうソフトがこんな安価で手に入るなんて!(大げさか?w)

 とにかく、この感動が熱いうちにデモ音源を作らねば! この手のデモのお約束として、まずは音源となるマッチ箱のシャカシャカを録る(笑)

□ 前後
 最初に前後のデモ。高さは正面固定です。ちゃんと前後が識別できるところが感動。前後はホロフォニクスでも微妙なのに、びっくりです。
 ちなみにシャカシャカが前方を横切ると眉間のあたりが、後方を横切ると後頭部がジンジンしませんか?(笑)

□ 上下
 続いて上下のデモ。ホロフォニクスのマッチ箱シャカシャカと比較すると、DearVRの方が高低のレンジが広いです。

 ただ……喜んでばかりはいられませんでした。後述しますが、どうも素材によって効果の効きが変わるようなのです。

□ 虫の羽音
 応用編として虫を飛ばしてみたのですが、あまり飛び回っている感じが伝わってこない……。
 ちなみにこの虫の羽音、今回のためにLogicのES2で作りました(笑)

 ホロフォニクスもそうですが、このDearVRも素材に向き不向きがあるのかもしれません。
 ここからはあくまでも僕の憶測ですが、ズッカレリ氏がなぜマッチ箱をチョイスしたのか腑に落ちます。決して適当にチョイスしたわけではなく、様々な素材で試行錯誤し一番効果のあった素材がマッチ箱だったのではないか? つまりマッチ箱の主成分である周波数が、ホロフォニクスと一番相性が良かったのです。

□ 足音
 続いては、足音を下方に位置させてみました。原音と比べると効果は明らかですが、残念ながら然るべき位置まで下げることはできませんでした。

□ 散髪
 微妙な高低差と極端な遠近の表現。これは、上手く行ったと思います。
 今回の想定は男性、または女性でも肩辺りまでの髪型ですが、まだまだ上げ下げできそうな感じだったので、ロングヘアーの想定ならば下方のレンジを広げることにより表現できそうです。
 ちなみに今回は、太めの糸を束ねて切ってみました。音だけ聞くと髪質が太くて硬い印象を受けるので、切られてる人は男性でしょうね(笑)

□ まとめ
 「素材を選ぶ」とは言え、立体音響をシミュレートするソフトの中では群を抜いた表現力だと思います。誕生したばかりですし、今後に期待せずにはいられません!

11/4/2017 19:36 note tools

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